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広島高等裁判所岡山支部 昭和45年(行コ)4号 判決

倉敷市南町六番一号

控訴人

斉藤竹郎

右訴訟代理人弁護士

甲元恒也

中村道男

同市幸町

被控訴人

倉敷税務署長

多田慶二

右指定代理人

清水利夫

土肥一之

門阪宗遠

藤田敏雄

岡田安央

主文

本付控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(当事者の申立)

一、控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が控訴人に対し、昭和三八年三月六日付でなした、控訴人の昭和三五年度所得税の譲渡所得金額を九九四万〇、九九九円(広島国税局長の裁決により九四〇万五、九九九円に変更)とする更正処分のうち、三三万六、八〇〇円を超える部分を取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、被控訴人

主文同旨。

(当事者の主張および証拠)

当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決二枚目裏末行の「一、七一二・二坪」を「一七一・二坪」と改め、同三枚目裏三行目の「両名」を除き「同浅田弘義」を加え、同六行目と同五枚目裏五行目との「八二万七、〇〇〇円」を「八二万三、六〇〇円」と改め、同一二行目の「八四番」の次に「(内一三四坪の借地権)」を加え、同六枚目表一行目の「一八九六万一、九九九円」を「一八九六万一、九九八円」と訂正し、同七枚目表七行目の備考欄に「同」を加え、同八枚目表七行目の「財務局」を「国(中国財務局)」と改め、同裏一行目「ため」の次に「(訴外佐々木靖之」を、同一〇枚目表三行目の「乙号各証」の次に「第三号証の三については原本の存在も)」を各加える)から、これを引用する。

一、被控訴人の主張の補充

控訴人は小林長太郎からの受領金中小切手分計二五六四万六、〇〇〇円については内金二一五三万五、九〇〇円を別紙第一表のとおりの名義で広島銀行倉敷支店に普通預金とし、残額四一一万〇、一〇〇円および現金受領分計八三五万円の合計一二四六万〇、一〇〇円を出損額計一二三四万四、〇〇二円(原判決二、(三)の2ないし4の各(3)の計から右(三)の(4)、(ハ)の二六九万円を控除し、(二)、(八)の六〇万円を加算した額)に充当したものである。

二、控訴人の主張の内被控訴人主張に対する反論の一部(原判決一、(三)の2の内三枚目裏六行目以下)を次のとおり補正する。

本件八四番、八四番の二四地は訴外池二祚、同天納昌子が代金計九一五万六、〇〇〇円で訴外小林長太郎に売却し、訴外高田英夫らと右小林間の本件八四番の二五地の売買代金額が二、四八四万円である。

したがつて、池点祚、池二祚、天納昌子が合計二六一二万五、〇〇〇円の金額を、控訴人らが転売の差額二四七万一、〇〇〇円を、高田らが転売の差額五四〇万円を取得したことになり、池点祚関係分の収支は訴外塩尻仙市が処理したので控訴人にはその詳細が必ずしも明確でないが、これら金額の清算は別紙第二表のとおりであり、被控訴人主張の預金は全体を混同しているものである。

三、証拠

(一)  控訴人

当審における証人西村勇平、同小田政男、同菊田三代治、同高田英夫、同江尻俊雄の各証言および控訴本人尋問の結果(一、二回)援用、乙第二一号証の成立は認める。

(二)  被控訴人

乙第二一号証提出。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであると判断するものであつて、その理由は次に付加するほか、原判決理由説示のとおりである(ただし、原判決一〇枚目裏末行から一一枚目表一行目までにある「収去してこれを更地として売却するため」を「収去する費用」と、同裏一二、一三行目の「売買名下に移転し、」を「売渡し、」と、同一二枚目表二行目の「被告主張の」を「前記福田町所在の」と、同裏七行目の「所有者」を「借地権者および所有権者」と改め、同八行目の「その頃」の次に「右借地権および土地を」を、同一三枚目表一〇行目の「支出した。」の次に「(右の内払下代金の支払、天納昌子への三六〇万円の支払、塩尻への一二〇万円の、平方某への二〇万円の支払の点は当事者間に争いがない)」を各加え、同一四枚目表九、一〇行目の「小田政男」から「供述している」までを「小田政男の各証言によれば、その後高田英夫らが原告から若干の金員を受領し、飲食遊興したことが認められる」と改める)から、これを引用する。

(一)  原判決一三枚目裏一一行目の「提出することことなく、」を「提出しない。」と改め「却つて」から同一四枚目表三行目までを削除し、同所に次のとおり加える。

この点に関して、小林長太郎から受領した代金の処置を検討すると、別紙第一表の普通預金が小林から受領した本件代金の一部を預金したものであること、内番号七が名義人通り神崎敏子の権利に属すること、番号五分が名義とは相違して控訴人に帰属することは当事者間に争いがなく、当審における控訴人本人尋問の結果(第一回)によれば、同表番号一の名義人である菊田三代治は控訴人が使用している事務員であり、番号六の名義人である斉藤菅次郎は控訴人の実父であること、控訴人は広島銀行において預金名義人として伊達努の名を使用していることが認められる。更に。

(1)  菊田名義の普通預金払戻請求書(昭和三六年六月二六日付)の裏面に「斉藤本人」の記載のあること(成立に争いない乙第一九号証の二八、二九により認められる)、

(2)  菊田名義の普通預金から昭和三五年一二月一三日一四八万円が引出され、他方金森名義の普通預金につき同日一四八万円が預入れられ、同月一二日から二九日までの間に計七二二万一、七一八円が引出され、同月二九日に伊藤努名義で広島銀行と同人ら二四人名義の同銀行への預金計六七二万一、七一八円を担保として手形割引契約をし、伊達を除く二三人名義で連帯保証していること(成立に争いない乙第一八号証の三一、三八、三九、六七ないし九六、第一九号証の三により認められる)、

(3)  所得四六年一、二月中菊田名義の預金引出に対応する金額が同日伊達名義で預金預入がなされていること(成立に争いない乙第一八号証の四四、四五、五三、五四により認められる)

等の事実があり、右(2)、(3)の預金の引出、預入は同一人によるものと推認される。

以上一切の事実に控訴人が別紙第一表の預金の一部帰属者という鈴木某、竹本某(池点祚の債権者という)の存在さえ明確でないこと、控訴人は同表番号一(菊田名義分)の預金に種々な性質を持つ金員が含まれていると主張し不自然であること(この点につき控訴人は塩尻仙市が売買代金の取得分につき処理したので控訴人には明確でないというが、乙第一二号証〔原判決引用部分に掲載〕によれば塩尻はこれを否定している)等の事実を綜合すると、別紙第一表の預金は、被控訴人の主張するとおり、番号七分を除き、すべて控訴人が他人(実在するか否かは別として)の名義を使用したもので、控訴人に帰属するものと推認される。

そうすると、控訴人主張の預金内容の前提となる本件土地取得についての支出(西尾某、高山某らは存在も明確でない)の存在も認めがたい。

(二)  当審における証人小田政男、同高田英夫、同菊田三代治の各証言および控訴本人尋問の結果(一、二回)中原判決および前記(一)の認定判断に反する部分は信用し難く、当審証人西村勇平、同江尻俊雄の各証言によつてもこれを左右するに足らない。

二、よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することし、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 辻川利正 裁判官 永岡正毅 裁判官 熊谷絢子)

第一表

〈省略〉

備考一、番号七は名義と実体に合致するが、これを除く分は控訴人に帰属するものである。

二、番号一の菊田は控訴人の使用人であり、番号六の斉藤は控訴人の実父である。

三、預入時期は番号一、二が昭和三五年一二月七日であり、他はすべて同月六日である。

第二表

第一、池点祚らの二、六一二万五、〇〇〇円分

〈省略〉

第二、高田らの五四〇万円

〈省略〉

第三、控訴人らの分

〈省略〉

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